いとうあきら イベントの企画・運営・演出を本業とするも、無類の食べ歩き好きが高じて“食べ手”の視点で店や料理を紹介。過去の書き手になかった大人の切り口で飲食への愛情を示した。著書に『東京百年レストラン(T〜V)』。

2018年12月01日

(118)新橋「シンバル」

激戦区新橋で安くおいしく飲み食いできる
レアな大人の空間

ぼくは現在、経営者向けの情報サイト「リーダーズ・オンライン」に連載を持っている。
https://leaders-online.jp/category/life/gourmet

たまたま宴席で隣り合わせた税理士法人代表からのご依頼。大変ありがたいご縁だった。
ぼくは、せっかく経営者向けサイトだから、単なるレストランガイドではなく、店の情報と組み合わせて飲食店の経営に踏み込んだ内容にしましょうと提案。初回から上場企業「株式会社ひらまつ」の陣内孝也社長を取材するなど、経営的にも成功している店を取り上げて、すでに10軒以上となる。

とはいえ、カジュアルフードや居酒屋チェーンなどに伺う予定はない。その後もワンダーテーブル、際コーポレーション、WDI(敬称略)等業界大手の社長にインタビューできたので、最近はもう少し専門性の高い店にシフトしつつあり、ますます楽しくなってきた。

経営と美味しい料理とを両立させて成功しているトップに訊くと、すべてではないものの、狙うターゲット層に重きを置いているケースに気づく。
数席しかない孤高の高級鮨や三つ星を取るようなレストランなど、高額や予約の取れなさでしのぎを削るカテゴリではなく、反対に数千円で飲み食いできる、居酒屋チェーンのような安いことが第一シリーズでもない。
その中間層を目指して自分の店を展開する。実は、その層は意外にも競争が少なく、さらに、今一番、客が求めているはずだと語る。

数回前の「酒井商会」でも述べたように、一万円でお釣りがくる価格帯で、おいしく飲み食いができて、すこぶる快適な大人の空間は希少。実は個人的に必死で探しているし、皆さん隠して(笑)教えてくれない分野でもある。
「和」系では、上記のウェブ連載でも紹介した中村悌二氏率いる「フェアグランド」の店など比較的見つかるけど、ワイン中心の西洋系レストランとなるとさらに難しい。ということで、今回はそれにふさわしい一軒「シンバル」をお伝えしたい。

場所は激戦区新橋。ソムリエと料理人、男性2人で営む空間だ。2人ともファーストネームに「シン」が付き場所も新橋。気軽に使ってくださいとの意味も込め「シンバル」としたようだか、まったくバルの印象はない。

二人の経歴を知ると、なるほど確かにバルではないと分かるが、あえて書く必要もなく実際に訪れてみれば納得だろう。
メニューを見ると、和の居酒屋的つまみから生ハムに至る前菜、パスタ、がっつりとしたフレンチの肉料理まで幅広く、それを家庭のキッチンかと思えるような小さなスペースで、一人黙々と作る。全ての料理において味のバランスがきっちたり整っていて、手作りの温かみとプロの技法が両輪となって加速する。

ソムリエも名だたるフランス料理店での経験を持ち、世界のワイナリーにも訪れていて、バルと呼ぶには格の違うレベルだ。しかも高額店で鍛えた舌をフル活用し、世界各地の優れたワインをできる限りの安価で揃える。へー、この味でそんな値段なの?と、毎回瞠目だ。もちろん接客も完璧でしかもイケメンである。

そんな高い技量を持つ連中ながら2人だけで切り盛りする結果、最終的にはエッと見直すほどリーズナブル。もちろんサービス料はとらず、なんらかのチャージもかぶせない。

場所は新橋の通称マッカーサー通り手前。ウェブの地図を頼っていくと入り口が分からない隠れ家感もまた遊び心がくすぐられる。
裏に回って小さな階段を上がるとそこが「シンバル」。カウンター6席とテーブルが4卓ほど。2人で回すには少々多めの客席を、そつなく、そして客にストレスを与えることなくこなすのも、過去の修業と実績の賜物だろう。

オープン2年経つが、未だ食べログに点が付かないぐらいレアで秘密の場所。
にもかかわらず、食べログからの予約も可能。そういったメディアをうまく使って人手を削減する感覚も新しい。

唯一の不満は店内が分煙、つまり禁煙ではないこと。新橋ならではの、バルと名乗ることからの必定か。それゆえ、嫌煙家をお連れするには少々気を遣う。が、時代の趨勢で間もなく全面禁煙になるだろうなと密かに期待をしている。

シンバル
●東京都港区新橋4-18-4 十合ビル 2F
●050-5595-7681
●17:00〜24:00
●日祝
posted by 伊藤章良 at 10:12| Comment(0) | フランス料理 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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