いとうあきら イベントの企画・運営・演出を本業とするも、無類の食べ歩き好きが高じて“食べ手”の視点で店や料理を紹介。過去の書き手になかった大人の切り口で飲食への愛情を示した。著書に『東京百年レストラン(T〜V)』。

2015年11月01日

(87)渋谷「まるこ」

どぶづけに突っ込まれた酒に魅力的な惣菜。

ふだん着感覚の酒場感がとにかく楽しい

先日、今福岡でももっとも人気のある居酒屋の一軒たという「炉端百式」を訪問した。いわゆる九州の特徴的な魚介に触れられて、炉端らしい活気に満ち溢れ、すばらしい、というより楽しく愉快な店だった。

というのも、炉端を取り巻くカウンターの前には、常に冷却水で満たされた幅50cmほどのステンレス水槽、通称どぶづけがあり、ビール、スパークリング・白ワイン、ソフトドリンク、そして水がストックされている。どぶづけは、お祭りの屋台などでよくみられる簡易の冷蔵庫。毎日使うとメンテナンスが大変だろうなと心配になるが、なにせそこから好きな飲物を勝手に取り出せるので、確実に普段の1.5倍は飲んでしまうし、水もスタッフに都度お願いする必要がなく、とても気が楽だ。

さらに、日本酒についてもセルフサービスが基本。
スタッフに声をかけて持ってきてもらうこともできるが、自ら日本酒セラーの前までいき、好きな酒を選んで注ぐ。自分で温度管理をしつつ燗酒も作れる。そしてさらに飲み過ぎるのだ。

料理はすでに完成の域。友人が取り置きを頼んでくれた「ごまさば」に始まり、炉端を活かした山海の食材がいかにも九州らしく味付けされる。それ以外にも、名物として「ウニの牛肉巻き」「バリバリピーマン」、面白いなあと注文したのが「大根の唐揚げ」等々。特にピーマンは添えられた肉味噌につけてモロキュウ感覚でいただくのだが、キャベツやキュウリ、根菜類でこういった食べ方をしたことはあるが、ピーマンとは驚き。さらにそのピーマンは肉厚ですごくおいしいのである。一度行ったぐらいでは全く物足りないラインナップに、福岡で暮らす人をうらやましく思ったぐらいだ。

そしてここからが本題。
つい先日渋谷におもしろい居酒屋ができたよと聞いて訪れたのが「まるこ」。この店は高円寺辺りで何軒か営んでいるグループが渋谷に進出した居酒屋とのこと。ただぼくは、この「まるこ」に入った瞬間に、ここは福岡の「百式」や、と思ってしまった。

店の造り自体は、「百式」よりずっと簡素化されていてシンプル。酒場感でムンムンだ。椅子やカウンターも客の長居を意識していない様子。カウンター中心の細長い店ながらテーブル席もある。
なんといってもカウンター前にあるどぶづけ。ここには、福岡と同様に、国内外のビール、ワイン、ソフトドリンク、そして水が冷やされていて、客はそれを選ぶことからスタート。日本酒はさすがにセルフサービスではないが、良質なモノを安価に多数そろえている。

かつおの藁焼きが名物だそうで、それ以外にも居酒屋らしい焼き物揚げ物が充実している。どぶづけの向こうの冷蔵のショーケースに惣菜が並べられ、あれもそれも注文したくてたまらない。そしていずれも廉価だ。

これまた嬉しいことに、〆に炊き立てのご飯が食べられる。白飯でもいいし鯛めしなどの炊き込みもある。ここで最後にご飯をいただけるなら、ふらふらと炭水化物を求めてラーメン店に入ってしまうこともないだろう。特に炊き立てのご飯は酔った脳を覚醒させる作用もあるように思う(医学的根拠はまったくないが)。

普段着感覚で楽しく愉快なひとときを。
ぼくが訪れたときは年配客が大多数だったが、渋谷という土地柄、こういった酒場の存在やここでの過ごし方をおもしろいと感じていただければ、文化も継承されるに違いない。

ところで、「まるこ」が「百式」をかなり意識し参考にしているのは、オペレーションだけではなくメニューにも見いだせた。上記の「百式」名物、ピーマンや大根は「まるこ」に存在したが、でき上がりそのものは残念ながら一日の長を感じてしまったことを少し付け加えておこう。

「まるこ」
●東京都渋谷区道玄坂1-18-4 和田ビル 102
●03-5784-1626
●16:00〜23:30(L.O.)
●無休
posted by 伊藤章良 at 19:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 焼鳥・居酒屋 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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