いとうあきら イベントの企画・運営・演出を本業とするも、無類の食べ歩き好きが高じて“食べ手”の視点で店や料理を紹介。過去の書き手になかった大人の切り口で飲食への愛情を示した。著書に『東京百年レストラン(T〜V)』。

2014年12月01日

(77)大阪「フジマル醸造所」

東京のイキリに疲れた僕を、本当にいい店とは? と、

フリだしに戻してくれた大阪ワインバー

二回連続で大阪の店である。
大阪出身、ということもあるが、最近とみに大阪の店はええなあと感じてしまうことが多い。というのも、大阪弁でいうイキリが東京の店には多くて、東京で生活を始めた平成の初期はそれもおもしろいと感じたが、だんだん年齢を重ねるにつれ疲れるようになってきた。イキリってうまく説明できないけど、検索すると、キザとかカッコつけることだそうで、まさその通りかも。

2014年の4月ごろだったか。
東京は浅草橋に「フジマル」というワインバーができた。
この店は、もともと大阪でワインショップを経営していた会社が、同じ大阪は松屋町に「フジマル醸造所」という店内でワインを醸すワイナリーに併設したワイン食堂を作った。その成功を背景に東京に進出、ということだろう。
ぼくは大阪の店が未訪だったが、いい評判を聞くので、まずは東京からと「フジマル」に出かけた。ブルータスの酒場特集で巻頭を飾るぐらいの鳴物入り、であった。

正直、浅草橋の「フジマル」は、期待とは異なる部分が多かった。
オープン当初だからかもしれないが、まず、ワインを飲ませる・売る店なのに、併設されたウオークインワインセラーのラインナッフも含めキチンと説明できるスタッフが少ない。飲む気満々で来ているのに気勢を殺がれた。料理も、メニュー名こそ心地いいんだけど、一皿が少量で味のベクトルもどっちつかず……。
もしかしたら東京というイキリの市場をキッチリとマーケテイングした後、作りあげられたのか。ゆえ、自分のテイストとずれているのかもしれない。ただ、もし大阪もコレなら(自分の知っている大阪であれは)決して流行るとは思えなかったのである。

それゆえ、ずっと大阪の本家「フジマル醸造所」にも行ってみたいと念じていて、少し前だが、やっと本家をのぞくことができた。そして、あまりの東京との違いに唖然としたのだった。

大阪は、前回の「たこりき」でも書いた松屋町にある。松屋町は人形を売る店が多いことで知られ、その点で浅草橋と全く同じ。また川(運河?)沿いに立っている物件を選んだ点なども、とても近いものがある。でも、一番に違うのは、メニューの創意工夫、こだわらない幅広いワインのチョイス、そしてなによりスタッフの情熱だろう。

まず、大阪の「フジマル醸造所」は、一階部分には大きなタンクが据えられ、そこでワインが醸造されている。二階のテーブル席は、そのタンクを眺めながらの飲食で、なかなか優雅なものだ。店内ではそこで醸したワインを飲むことができる。ブドウも大阪の自社畑で育てたものというのでシャルドネをトライ。自分で嗅ぎ分けられる範囲のシャルドネではなかったものの、そこは格別の爽やかさを堪能しよう。
一方、「フジマル醸造所」は国産ワインにこだわっているわけではなく、世界各国のすばらしいワインを平等に届けたいという意図を強く感じた。過日は一説にワイン発祥の地域といわれるジョージア(グルジア)のワインが安く飲めるフェアを開催しており、安価ながらに葡萄酒の真髄を垣間見る瞬間を体験した。

今回のジョージアワインを提供するフェアも、テーブルに来るスタッフがそれぞれの意見やテイストで魅力を語っていく。関西人特有のおせっかいかもしれないけど、ワインが好きでたまらなく客にもその愛情を伝えたくてたまらない、そんな面々の話を聞いているだけでグラスが空く。というか早く空けて次にいきたくなる。

料理がこれまた、本当にすばらしい。東京もなぜ大阪のメニューの提供を受けないのかと不思議に思う。確かに大阪を含めた関西の地名が付く食材を使ったメニューが多く東京では再現できないのかもしれないが。
前菜はポテトサラダをはじめ、いずれもひとヒネリどころか、二つも三つもヒネられていて塩も過不足なく、フレッシュな醸したてワインに合う。さらにパスタは瞠目。季節や大阪の食材を使った旬のものもよく知る定番も、久しぶりにバスタを食べて唸った。シェフは「ポンテ・ベッキオ」出身と聞いて納得。居酒屋の延長で来ている客にガツンといわせている。

この、東京とのあまりの差はなんなのか。
東京に暮らして25年。ようやく東京と大阪の違いがわかり始め、フリダシに戻った感覚を、これからのバネにしようと思う。

「フジマル醸造所」
http://wineshop.exblog.jp/i32
●大阪市中央区島之内1丁目1−14 三和ビル1F
●06-4704-6666
●13時〜22時
●水休
posted by 伊藤章良 at 20:50| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/409908839
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック