いとうあきら イベントの企画・運営・演出を本業とするも、無類の食べ歩き好きが高じて“食べ手”の視点で店や料理を紹介。過去の書き手になかった大人の切り口で飲食への愛情を示した。著書に『東京百年レストラン(T〜V)』。

2012年10月02日

(59)大阪「カンティーナ ピアノ・ピアーノ」

イタリアンは西高東低と

改めて思えた1軒

イタリア料理店の紹介なのに、冒頭から日本料理の話で恐縮である。

そもそも、日本料理は西高東低と言われ、西に魅力を見出す向きが多かった。ところが、昨今の東京の食べ手は、京風であれば無批判に受け入れようとする京都コンプレックスの呪縛からやっと抜け出し、東京の日本料理を東京で生まれたものとして、楽しめるようになってきた。

そんな現象は、特に次々と独立する若手の料理人が、過去に修業した店のやり方にこだわらず、自分たちで食材の仕入れ先を探したり、新たなオペレーションを考えたりと、独自の道を歩み始めたことでも理解できる。

そんな日本料理の状況とは逆に、今やイタリア料理が西高東低ではないかなあと最近時々思う。東京のイタリア料理店は、一時期もの凄い隆盛を見せたが、現在はかなり飽和状態にあり、よほどの個性、地方性を発揮しないと、素人目には他店との差別化が難しくなっている。

加えて、イタリア料理は、ニンニク臭かったり塩辛かったりパスタが硬かったりしてはいけない。やさしくて美しくて野菜中心のヘルシーなものという、トウキョウイタリアンの呪縛から逃れるのが相当困難な様子。であれば、そんな縛りを受けにくい首都圏外のほうが、様々な個性を発揮する店が生まれやすい土壌を持っているように感じているのだ。

ではなぜ、縦に長い日本の中でも、関西地方なのだろうか。
すでに言われているスペイン料理なら関西、という流れが、同じラテン民族の食であるイタリア料理も、やっぱり関西人のスピリットに響くのだと考えれば、より面白い展開だ。それは、大阪だけではなく、京都や奈良の山奥にまで、出色のイタリア料理店が見つかるところも興味深い。

もちろん大阪の雄である「ポンテベッキオ」を筆頭としたい気持ちはあるが、今回はもう一つの潮流ピアーノ・ピアーノから、「カンティーナ ピアーノ・ピアーノ」を紹介したい。
場所は西梅田。関西人なら誰でも知っている大阪サンケイホールのビル。今は、なぜかブリーゼブリーゼという“広告代理店のプレゼンに対しまったく疑問を挟むことなくOKしてしまった”みたいな意味不明の名前になっている。こうして、古くからなじみある場所はどんどん失われ街は枯れていくんだなあとつくづく思うが、思うだけで自分にはどうしようもない。
ビル自体も決してわかりやすいレイアウトではなく、目的のフロア6階に上がっても、広いスペースではないにもかかわらず、なかなか目的の店が見つからない。天災などが起こったら、必ずやどちらに避難していいのかわからず、パニックになるだろう。

さほど人通りもないフロアゆえ、果たして「カンティーナ ピアーノ・ピアーノ」はどうなんだろうかと思いきや、入店した途端、それまでの迷いは杞憂に終わった。

満席、である。しかも、家族連れや落ち着いた年配のグループなど、客層は抜群にいい。東京にて、こんな客層で埋まるイタリア料理店は、ほとんど見かけない。ゆえ、大阪の客の成熟度を改めて認識すると同時に店側も幸せだろうなと感じた。

サービススタッフのノリのよさ、客を楽しませようというサービス精神は、改めて西のスピリットだと思うし、客からも「オモロないなー」とか言われ、相当鍛えられているに違いない。ここでも、単にボナセーラと叫んでいれば及第点の東京とは、一線を画する気がする。

料理は相当に塩が強い。煮込みなど舌が痺れるぐらいである。そのせいかもしれないが、各テーブルを見渡すと、今や客の半数以上が水しか飲んでいない東京より、圧倒的にワインをボトルで飲んでいる確率が高い。

パスタは、かなり個性的で他に類を見ないウマさ。手打ち麺だそうだが、同席した元日本製粉の知人ですら、乾麺じゃないの? といったぐらい、エッジの効いた乾麺特有の弾力がある。加えて手打ちのモチモチ感もじわじわと発揮するので、いわゆる双方のいいトコ取り。それを一つの方向のみに味付けしたシンプルなソースと具材に絡める。麺に相当自信があり、麺を食べさせる料理だ。

商業ビルの飲食フロア一角、化粧室も店の外しかもかなり遠い。そんな環境ながら、大阪の上顧客をキッチリ集め心から楽しませる。イタリア料理店としての熟成度合いは、かなり高いと感じた。

今後も関西のイタリアンに注目していきたい。

カンティーナ ピアノ・ピアーノ
●大阪府大阪市北区梅田2-4-9 ブリーゼブリーゼ 6F
●06-6136-5667
●11:00〜14:30LO、17:30〜21:30LO
●不定休
posted by 伊藤章良 at 23:23| Comment(0) | TrackBack(0) | イタリア料理 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック