いとうあきら イベントの企画・運営・演出を本業とするも、無類の食べ歩き好きが高じて“食べ手”の視点で店や料理を紹介。過去の書き手になかった大人の切り口で飲食への愛情を示した。著書に『東京百年レストラン(T〜V)』。

2012年03月01日

(53)銀座「銀座しまだ」

立ち飲みスタイルに高級割烹出身の腕がさえる

定食屋さながらの多彩な料理

銀座はコリドー街と電通通りの間、こんなところに道が存在したのかとも思える細い路地に「藍」という小さな割烹があった。食に関して深い信頼を置く文芸春秋社のk氏をして、もっとも銀座らしいといわしめる店。ぼくは、最寄の蕎麦屋「ふく留」にしばしば通っていたので「藍」の存在は知っていたが、k氏から話を伺うまで、ここがそんなスバラシイ店とは想像もしなかった。食べログを見ても、その歴史ある名店に関しデータの登録はあるもののレビューは1件もない。

k氏にいつかお連れいただこうとタイミングを測るも、そのk氏より「藍」が閉店してしまうことを知る。それを惜しんで訪れたk氏は、「藍」の女将さんから、次にできる「しまだ」という店もご贔屓にと、引継ぎまでされたそうだ。そして、「藍」には訪問が叶わなかったゆえ早々に顔を出したのが、同じ場所にオープンした「銀座しまだ」である。

ここで一つ、面白い現象を紹介しよう。「藍」が銀座で何年営まれていたかは詳らかではないが、上述したように食べログには1件のレビューもなかった。ところが「銀座しまだ」は、オープンしてまだ1か月にも関わらず、原稿を書いている時点で22件の書き込みがあり、しかも得点はすでに4点を超えている。

これこそが、口コミという最も信頼できるコミュニケーションの形態を、すっかりマス化して疑心暗鬼にさせてしまった食べログというサイトの特徴といえよう。

食べログレビュアーというか食べログラバーは、レイティングにはぜひ参加したいがそのためには必ずレビューを書かなければならない。プロでさえ四苦八苦する食に関する記述は、語彙も多くは流通しておらず、ほとんどの表現が生涯最高とかCP抜群程度に終始してしまう。となると、その店自体のスペックやメニューの品数が豊富であればあるほどレビューのボリュームを増やせるという、食べログラバーにはウレシイ状況となる。

さて「銀座しまだ」に戻ろう。店主の島田博司は、ミシュラン東京で三ツ星を取っている「幸村」出身。つまり、レビューを書く際こんなにおいしいスペックはない。さらに、高級割烹で修業したにもかかわず店内は立ち飲みスタイル。メニューが豊富にあってしかも安価等々、表現の巧拙が問われる具体的な記述に至らないまでも、事実として書けるポイントが事欠かないのだ。よって、以前の「藍」では1件もなかったレビューが1か月で22件にもなりtop500店入りも果たすわけだ。

こうして説明してくると、食べログのレイティングは全く参考にならないことが分かる。しかし、ここに取り上げるからには、本当にいい店なのである。

ガラッと開けて店内に入るとすでに客層が若者ばかりなのは、食べログ高得点ゆえ「ま、しゃーないな」とあきらめるが、店主がそれを望んだのかどうかは疑問だ。ただ、多くのレビュアーが「新しいスタイル」と書くほど新しい点があるわけではなく、浪速割烹「喜川」のやり方を店のスペースの都合で立ち飲みカウンターにしたと思えば分かりやすい。といっても、浪速割烹「喜川」スタイルが東京では全く認識されていないので、実際には新しいのかな。
(なお、浪速割烹スタイルについては、(26)二戀 の記事で解説を試みているので参照してください)

料理は高級割烹出身からは想像できないバリエーションである。カツも唐揚げもバター焼きもコロッケもある。と書くとさしずめ定食屋のようだが、使う食材は白子、白魚、ズワイガニ、さつま揚げと、当然ながら修業で蓄えた職人としての技は冴える。くわいチップやおひたし、きんぴら等のちょっとした小鉢も、さまざまにひとヒネリして用意されている。

ぼくが訪れた際、メニュー黒板の冒頭に「バチコそば」なる6000円もするものがあった。その他は2000円程度が最高ランクで、1000円のものも500円のものもある中に、ひときわ輝いていた。

バチコとは、三味線のバチに似ていることからその名がついた、いわば京都流の呼び方で、本来はくちこという。聞けば、そんな高級珍味を蕎麦の上に惜しみなく振りかけた料理らしい。しばし検討の後、一段階安価な「からすみそば」1600円に落ち着いたが、固めに茹でた蕎麦の上に大量のからすみ粉が緬が見えなくなるぐらい振ってあるシンプルなもの。なんとなく「銀座しまだ」のコンセプト、というかやりたいコトが、この「からすみそば」に凝縮しているような印象を受けた。

次回、まだメニューに「バチコそば」があれば挑戦してみたい。

「銀座しまだ」
●東京都中央区銀座8-2-8 高坂ビル1F
●03-3572-8972
●17:00〜23:00LO
●日祝休

posted by 伊藤章良 at 09:33| Comment(2) | TrackBack(0) | 日本料理 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ご無沙汰しております。

ふと、久々にこちらを開いたら・・・。
そうなのですよね、
私も「しまだ」さんへ伺いびっくり。
あれ?ここって「藍」があったところ?
いや、お隣?と、暫く、あの通りで「藍」を探してしまったら、まさに「しまだ」さんがその跡だったのですね。

閉店されていたとはしらず、カウンター越しの畳にちょこんとお座りし、やんわりといつもお話ししてくださった大女将に何かあったのかと心配し、しまだで伺ったら、相変わらずお元気と聞き安心。

夜な夜な人知れず訪れる重鎮方をも癒したおでんや焼き魚ももう頂けないのかと思うと残念だけれど、代わって「しまだ」さんは、私たち小市民の癒しですね。
Posted by Kuming at 2012年03月18日 15:28
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