いとうあきら イベントの企画・運営・演出を本業とするも、無類の食べ歩き好きが高じて“食べ手”の視点で店や料理を紹介。過去の書き手になかった大人の切り口で飲食への愛情を示した。著書に『東京百年レストラン(T〜V)』。

2011年11月01日

(49)中目黒「ヒナアゲ嫡嫡(チャキチャキ)」

素揚げのコース1本で勝負!

大人のフライドチキン店

ぼくはニワトリがとても好きである。

大阪で生活をしているときには、チキンよりは肉(牛肉)文化な土地柄ゆえ、どちらかというと焼鳥や鳥料理のプライオリティは低く、定期的に通える店は少なかったが、東京に出てきて、かくも多種多様な鳥料理店があることに大変喜んだ。

加えて、定食屋のメニューに鶏の唐揚げを見つければ、まずはそこから注文する。蕎麦屋では「かしわ南蛮」だし、宮崎料理でもひたすら「地鶏の炭火焼」と「チキン南蛮」を食う。鶏一羽それぞれの部位をナマで提供する(現在は未確認)蒲田の「鳥樹」に出会った折には本当に感動した。

9.11の同時多発テロがあったおかげで断念したが、2000年の初めごろ、ニューヨークで焼鳥屋が開けないかと真剣に物件まで探したこともある。

世界最高峰としてフランスはブレス地方の地鶏が挙げられるが、そのブレス産地鶏をこれまた最高の調理法で食べさせる、ミシュラン三ツ星レストラン「ジョルジュ・ブラン」にも遠征してきた。

とは言いつつ、もっともオイシイ鶏の調理法は、限りなくB級に近いフライドチキンかローストチキンだと思っている。ナゼかというと、上記につらつらと書いてきた料理はそのほとんどが骨なし(骨抜きとも言えそう)だが、フライドチキンもローストチキンも、骨付きのままに調理されガシガシとかぶりつけるのがいいのだ。

現在のところローストチキンのマイベストは、ハワイ オアフ島でワイキキから車で1時間ぐらい走った島のちょうど真ん中辺にある「マウイ・マイクス」。いっぽうフライドチキンとなると、これは頭を抱えてしまうぐらいに迷う。

そんな中で、新たにぼくを悩ませるフライドチキン店が中目黒に登場した。「ヒナアゲ嫡嫡」である。

中目黒といっても、山手通り沿いでも商店街でもなく、駒沢通りと山手通りの交差点から少し恵比寿側に入って目黒方面に進んだ辺り。ジンギスカンの「まえだや」やワインバー「モノポール」の並びといえばわかりやすいだろうか。

ここは、エントランスの構えや洗練された内装から、レストラン運営のプロというかマーケティング的に計算された印象も受ける。つき出しにオニオンスライスを出すなど、自由が丘の有名店を模した感じも否めない。

でも、雛鳥の素揚げコース一本(現在のところ2000円)で勝負をしている潔さと自信に、フライドチキン好きとしてまず強い興味を覚えた。

食べ放題のオニオンスライスと、もう一品のお通し。砂肝もしくはナンコツ揚げいずれかと、手羽そしてモモの素揚げ、ラストのスープ。以上の流れがコースで、サイドメニューも野菜天ぷらやお新香等、数種しかない。この品揃えは、客には若干の寂しさも感じさせるが、素揚げ一本で行列を作っている自由が丘の有名店を模範とすれば、十分に勝算があると見たのだろう。

また、立石の「鳥房」や自由が丘の「とよ田」、蒲田で名店「なか川」の流れを汲む「うえ山」等に比べると、換気がすばらしいのは油を扱う店として特筆すべきで、火入れの絶妙さもピカイチ。席は、ゆったりと幅広くとってあり(その分はコストには跳ね返るが)大人仕様でもある。

そんな点も意識してか、油も塩も良質で全体的にマイルドな仕上げ。塩も控えめで、足りなければ別途テーブルで追加する仕組みは大変喜ばしい。また、ドンペリやクリスタルといった高級シャンパンがメニューにあるのも、そういったターゲットに対するアプローチだろう(個人的にはここで飲む人がいるとは思えないけど)。

なお「ヒナアゲ嫡嫡」は、チャキチャキと読ませ、江戸っ子らしい店を目指すコンセプトだそうだが、実際にはチャクチャクとしか読めないような気がする。個人的には、江戸っ子らしい威勢のいいチャキチャキ感というより、良家の嫡男が責任とプライドを持ってじっくり仕事をこなしている落ち着いた店、としてオススメしたい。

ヒナアゲ嫡嫡
●東京都目黒区 中目黒1-6-15ノブジィーハウス101
●03-5734-1318
●16:00〜23:00
●日休
posted by 伊藤章良 at 20:42| Comment(1) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ヒナアゲ嫡嫡
チキン料理 食べてみたいです
Posted by ryuji_s1 at 2011年11月22日 08:06
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