いとうあきら イベントの企画・運営・演出を本業とするも、無類の食べ歩き好きが高じて“食べ手”の視点で店や料理を紹介。過去の書き手になかった大人の切り口で飲食への愛情を示した。著書に『東京百年レストラン(T〜V)』。

2010年10月01日

(32)銀座「アロマフレスカ」

銀座に進出した

日本のイタリア料理店の王者

銀座に移転した「アロマフレスカ」に行ってきた。
流石、という言葉しか思い浮かばない圧倒的に寛いだ時間だった。

「アロマフレスカ」の広尾や麻布十番時代の思い出は、「クラリタ ダ マリッティマ」の記事に大半を書いたので、ここが本家ではあるけど省略。ただ、麻布十番に移転した当初「カーザ・ヴィニタリア」のみの営業とし、その後、満を辞して「アロマフレスカ」オープンに着手した経緯から、ここが「かの店」にとっての最終形なんだろうなあと、個人的には解釈していた。

ところが銀座進出である。しかもレストランやショップが多々入る雑居ビルの最上階。さまざまな目的の人々と明るすぎるエレベーターに乗合わせなければならない。

いろいろな機会で「レストランに行く目的は店へのアプローチから始まっている」と書いていきたぼくだが、この店ばかりは、最寄り駅で待合せて一緒に向かうのではなく、「店のダイニングに集合」としたほうがベターかもしれない。

といいつつも、満員のエレベーターに乗ってさまざまに階層を選ぶ中、自分が「12」のボタンを押し、視線が一斉に「12」にはなにがあるのかと上を見上げる瞬間は、多少誇らしくはある。

到着したフロアは左右に分かれていて、向かって右手が「アロマフレスカ」、左手は、ディフュージョンである「サラ・アマービレ」。エレベーターを降りた瞬間にはレセプションも看板もないので、初めての客はどちらに行っていいのか分からない。ホテルの最上階にありがちのチープなレストランフロアを思い浮かべて若干苦笑。

若いサービススタッフが飛んできて、「どちらに行かれますか」とすぐさま問う。店名を告げると方向を示されて終了。コース20,000円の店なら、せめて入り口まで案内をしてほしかったなと思う。

そう、麻布十番から銀座に移った「アロマフレスカ」の最大の変化は価格を大幅に上げたこと。9,000円だった定番のコースが16,000円に、11,000円は20,000円になった(皿数が少し増えたのと税サ込みではあるが)。

これを一般には、銀座に出店して地代が上がったからだと解釈する向きもあるけど、ぼくは、少しでも予約を取れやすくしたい、混雑を緩和させたいと願う店側の挑戦と受け取った。
価格を上げることによって、抑止力がかかり予約が楽になるのか、客層が安定するのか。それはこれから検証されていくことになる。ただ今まではあまりに安価すぎて、需要と供給のバランスがとれていなかった。

いっぽう、ワインの価格は据え置き。というか、コース20,000円のレストランにしては異常に安く感じる価格帯である。ワインの価格は訪れてリストを開いてみないと分からないし、飲まない人にはあまり関心がないゆえ、逆にワインの価格は上げる必要がなかったとも考えられる。

さて、再びダイニングに目を向けると、全体的にぐっと照明を落として安易に写真を撮れなくし(笑)、真ん中に大きな植物のアレンジメントを施す。それを囲むように円テーブルのみを配置。ぼくが訪れた日は9卓。全てがカップルなわけで、円卓の片側は全く死んでしまう贅沢すぎるレイアウト。壁側をベンチシートにして四角いテーブルを使えば2倍は集客できるだろうけど、あえてそれはしない。というか、するつもりもないだろう。
しかも、同じサイズの円卓のみを使うので、予約人数のマックスは6名と限定している。お食事会的な団体様を排除する目的もあるのだと思う。

「アロマフレスカ」のダイニングを統括するのは田渕勝俊マネージャー。「クラリタ ダ マリッティマ」の植野剛史さん同様、ずっと以前からアロマフレスカグループのサービスを支えてきた古株。植野さんとタイプは異なるが、これまたサービスマンの鏡のようなステキな方である。田渕さんと植野さんが麻布十番時代の「アロマフレスカ」から抜け、個人的にはすっかりこの店への興味を失っていただけに、ぼくにとっての最大の朗報といえよう。

さすがに「カーザ・ヴィニタリア」のころのようなコミカルで楽しい接客には、店は広すぎるしコンセプトも異なるが、日本を代表するイタリア料理店のマネージャーとして堂々たるもの。相変わらず動きにキレがあり、しなやかな応対も抜群だった。

料理の内容はあえて論ずるまでもないと思う。少し次の料理がサーブされるまでの時間がかかりすぎ(特に前半)とは感じたが、少しでも長く、あの贅沢な空間にひたっていられることをラッキーと受け止めるべきだろう。

「アロマフレスカ」は、さすがに日本のイタリア料理店の王道。しかも常に新しい仕組みを求めて挑戦も続けている。パーツパーツでは「アロマフレスカ」を超える店もあるが、総合的に日本のイタリア料理店でここを超える店はあるのか。当分は「アロマフレスカ」を追う店を探すことになりそうだ。

fresca.jpg
「アロマフレスカ」
●03-3535-6667
●東京都中央区銀座2-6-5 銀座トレシャス12F
●17:30〜23:00 (LO 20:30)
●日月

posted by 伊藤章良 at 19:30| Comment(0) | TrackBack(0) | イタリア料理 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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