いとうあきら イベントの企画・運営・演出を本業とするも、無類の食べ歩き好きが高じて“食べ手”の視点で店や料理を紹介。過去の書き手になかった大人の切り口で飲食への愛情を示した。著書に『東京百年レストラン(T〜V)』。

2010年09月01日

(31)大塚「蒼天」

グルメ系焼き鳥の最右翼は

日本酒のラインナップもドストライク

焼鳥には、最高級の素材を仕入れ、タレや塩にもこだわり、絶妙の焼き加減で提供するグルメ系の店と、そこそこの素材を塩やタレも強めにして焼き、安価な酒のつまみとして楽しむ飲兵衛の店とに大別されるが、そのいずれもぼくのストライクゾーンである。

そしてぼくの個人的な好みでいくと、飲兵衛の店としての最右翼は、ここ数年目黒の「鳥芳」が不動(そこから巣立った若者たちによる「鳥芳 恵比寿店」は以前こちらで紹介した)。

グルメ系は、十数年前に中目黒の「鳥よし」で受けた衝撃に始まり、気位も値段も高いけど確かにうまい麻布十番の「世良田」、白金で新境地を見出した「酉玉」、「鳥よし」から巣立った面々による「鳥しき」「笹や」などの新規店も応援しつつ、やはり大塚の「蒼天」に軍配かなあと思っている。

焼鳥を食べに大塚に出かける。池袋での乗り換え利用など行動範囲が最寄りではないと少し行きにくい向きもある。だがそこは、「おいしいものを食べるためだけに、その町にでかける」ミシュラン精神で、多少の遠方は厭わない。

「蒼天」は、もともと大塚の北口で営業開始。その後新店舗を南口にも出し、しばらく南北双方で頑張っておられたが、現在は南口店に統一。JR大塚駅南口から、しばらく坂を上がり、飲食店もまばらになってきたあたりでポツンと見つかる。

夜の場合、薄明かりの中ではじっくり見ないと気づかないが、「蒼天」の木彫りの看板はベースが鮮やかな青。こんなところにも潔いこだわりが感じられて、入店前から期待値はオーバーフロー気味。

店内は、厨房を囲むように大きく幅広のL字カウンターがドンとあり、かなりゆったり目。麻布十番辺りにありそうな焼鳥ダイニング系を想起させるが、威勢のいいお兄さんたちの声や厨房の活気に、「らしさ」を発見してホッとする。
奥にはテーブルもあるようだが未確認。焼鳥でも天ぷらでも鮨でも、セオリーであるカウンター席に座らないと落ち着かない。

すすめられるまま鳥の刺身を盛り合わせで。これが、いつどの順番で箸をつけようかとタイミングすら悩んでしまうほどの美しさと、実際に食べた直後、お皿からなくなってしまったことを後悔するぐらいのうまさ。

ぼくは焼鳥では比較的焼酎で合わせることが多いが、「蒼天」の刺身は確実に清酒を求めている。そこで改めてメニューを見ると、意図せずニンマリしてしまった。「蒼天」にきらめく最大の個性と魅力、それは焼鳥店でありながらこの清酒のラインナップだろう。決して多くはないが、地酒好き、特に純米酒好きの嗜好にドストライクの品揃え。清酒を飲むためだけに「蒼天」に誘ったとしても、清酒党から決して文句は出まい。

そして焼鳥に移る。門外漢ゆえ感覚でしかお伝えできないが、「蒼天」の焼鳥は熱い。もちろん他店がアツアツではないとはいわない。「蒼天」がひときわ高温に感じるのだ。鶏肉の表面を強い温度で炙り瞬時に旨味を内部に閉じ込める。できるだけ短時間で一気に火を通した後、絶妙のタイミングで客席へ。と、そんな仮説を立ててみるのも一興だろう。この温度管理の絶妙さは、元々本店だった北口店では、店主の立つ焼き場が客前から遠かったことに対する反省と改善に違いない。

清潔かつ広々とした店内で、スタッフの皆さんも男前で感じがよく、生でも焼いても煮てもうまいとなると、ここはぜひカップルで訪れてほしい。比較的新しい店ながらも、燻し吟な男たちの真摯な仕事ぶりには、意中の相手も必ずや目を細めることだろう。


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「蒼天」
●03-5944-8105
●東京都豊島区南大塚3-39-13
●17:30〜23:00(火〜金)、17:00〜23:00(土、日)
●月休

◆◆2ヶ月連続で申し訳ございません。今月も海外出張のため、
15日の更新はお休みをさせていただきます。次回は10月1日です。◆◆
posted by 伊藤章良 at 09:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 焼鳥・居酒屋 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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